磯田園のお茶づくりへのこだわり

私たちのお茶作りの基本姿勢として、「お客様の好みに合うお茶づくり」をテーマとしています。

時代が変わればお客様の味覚も好みも変化していきます。だからこそ、お客様の声に耳を傾けたお茶づくりを行い、私たちの技術の向上や商品への工夫を重ねています。

私たちがつくるお茶を決めるにあたり、原料生葉、原料茶葉、加工方法などについて商品の製品設計・デザインを行います。(形・色・味・香など)

味と水色のバランス
香りの特徴

お茶づくりの技は、「育て・蒸し・揉み」で、原料茶を作る茶師と、原料茶の仕上げである「選別・火入れ・合組(ブレンド)」する茶匠の二つの技の融合です。

磯田園は、自園によるお茶の栽培及び商品づくりまで自社で一貫して行うことから、茶師であり茶匠です。お茶づくりの全ての工程を把握し管理しているからこそ、お客様に喜んでいただけるお茶づくりに日々努力しています。

日本茶は、茶園で育てた茶葉を、工場へ運び、荒茶という原料茶葉を作ります。  
次に、その原料茶葉を、選別、切断、火入れ(乾燥・焙煎)、ブレンドという仕上加工を経て製品になります。

ですから、製品の一番の元は、茶園の生葉にあることは今更いうまでもありません。そこで、弊社創業者は、茶卸業、仕上加工、茶園づくり、荒茶加工の順番で、すべてのお茶の工程に携わることで、「いいお茶」作りを目指しました。

磯田園の茶園は愛知県渥美半島の豊橋市と田原市に合計19ヘクタールあります。
今でも、創業者自身が茶園に赴き茶と語らい学んでいる姿は、社員全員が手本としているところです。

自社農園

茶業界には、老舗の目利きバイヤー、手揉み名人、茶師何段、農林水産大臣賞受賞農家と、「名茶匠」といわれる凄い方々がいらっしゃいます。永年の経験と技術の向上の鍛錬から最高のお茶作りを求め、精進されている素晴らしい方々です。

磯田園でも、1950年代から、「名茶匠」の先輩農家・専門家の皆様から「茶園づくり」、「荒茶作り」、「仕上げ加工」など多くの技術を学び、自らも技術の向上と継承に努め、お陰様で農林水産大臣賞も3度受賞させていただきました。しかし、弊社では自らが権威を主張することなく、お客様に喜んでいただくことを第一として、「お客様の好みに合うお茶づくり」というテーマを掲げ、現在に至っております。


創業者である弊社会長の製品づくりの理念として、
「茶天狗にはなるな。但し、茶天狗になれるほどの見識と技量は持とう。」
という言葉を大切にしています。


「茶天狗」とは、お茶の業界用語で「独りよがりのお茶作り」と言う意味です。自身の専門性に特化し、お客様(消費者)の好みを無視したお茶作りです。

磯田園は、1970年代から直営店舗での販売を本格的に始める中で、全国各地でお客様からの高い評価をいただき、その中で「岡女男面茶」というロングセラーの商品を育ててもらうことができました。

この「岡女男面茶」がロングセラーになったことこそ、茶天狗にならず「お客様の好みに合うお茶作り」を目指した結果と自負しており、この「岡女男面茶」は30年以上の長きにわたりお客様から愛され続けております。

岡女男面茶



磯田園のお茶づくりとは、「お客様が美味しいと思えるお茶を作ること。作り手の好みをお客様に押しつけるものではなく、さりとて、作り手に、軸(信念)がなければ、そのお茶作りは八方美人となり、お客様にやがて敬遠されてしまう。」と考えています。

だからこそ、磯田園のお茶は、季節・天候にあわせ、ブレンド比率、仕上げ加工等のバランスを調整します。季節によってお客様の嗜好が変わると「近ごろお茶がまずくなった」となってしまうからです。

同じ原料で、同じ方法で、正確に同じお茶を作っても、お客様に「味が変わった」と思われるのでは本意ではありません。
「お客様の好みに合うお茶作り」という永遠の課題を、スタッフ一同さらにお客様と一緒に楽しんでまいりたいと思っています。

茶園の原料生葉について

農家は、自身の茶畑にはどんな特徴があり、周囲の畑の管理状況、除草状況 排水の様子など、良いところ、悪いところがあることを全て知っています。しかし、その思い込みが油断となり、見落とすこと、失敗することがあります。ですから、創業者の「茶天狗になるな」を日々の心得としています。
 
茶園では、「お客様の声」を「他農家・専門家の視点」と置き換えて、地元農家の方・茶の専門家、さらに茶園土壌の科学的データ分析などのアドバイスをいただくことで、独りよがりの茶園・生葉づくりにならいように努めています。

自然の中にある茶園の状況は、日々刻々と変わります。その変化をいち早く観察することで、環境にも人にもよい、施肥管理・土壌改良・防除作業などを行わなければならないと考え、さらにその手法が茶天狗であっては意味がないとの考えから、磯田園では2016年に、東海地方で最初のGGAP認証(国際的適正農業規範)を取得し、現在も継続しています。

お茶の品種は多数です。磯田園では、やぶきた、ゆたかみどり、さやまかおり、こまかげ、ごこう、あさつゆ、おくみどり、かなやみどり、京みどり、在来種など、品種による特徴も茶園から栽培することで、そのお茶の特徴をつかみ荒茶作り、仕上加工、さらに他社様からの仕入れる原料茶の評価にも生かしています。

荒茶をつくること

原料生葉を原料茶葉(荒茶)にすることを、荒茶製造といいます。
磯田園には、荒茶工場の生産ラインとしては、35kgラインと240kgラインがあります。
35kgラインでは、少量の生葉で荒茶を製造することができ、240kgラインでは35kgラインの約7倍の処理能力で荒茶を製造することができますので、お茶の時期、品種、栽培方法など目的にあわせたお茶作りによって使い分けています。

畑から摘んできた茶葉は、栽培過程、栽培方法、摘栽時の気候によって、1つとして同じ物がないため、茶葉の酵素による酸化を止めるために当てる蒸気の量、茶葉の細胞壁を壊して葉の内部と外部を同じように乾燥させるための揉む力の機械調整、茶葉の形状を整えるための水分調整(出し度)など微妙な調節の連続です。

磯田園では、その微妙な調節を継続的に行うことで、製品の安定が保たれると考え、熟練茶師による機械の基本設定・微調整と機械装置による継続的、客観的な水分分析の両方により、荒茶製造をすすめています。

磯田園では、茶畑で何時、どれだけの生葉が摘栽されたという社内情報の共有をすることによって、工場の製造処理能力に合わせ、できるだけ生葉の保管時間を短くし、鮮度の高い荒茶作りを、GGAP認証の工程管理によって行っています。

また、同業種の荒茶生産者としての目線で、全国各地の荒茶をみることで自社の仕入基準を軸に、生葉生産者農家、荒茶工場茶師の気持ちを理解しつつ、お客様が望む仕上茶の原料となる荒茶を吟味して、原料荒茶仕入に生かしています。

仕上加工

お茶の仕上加工には主に、つぎのようなものがあります。

  1. 原料の荒茶を、茎、粉、葉の大小・重さ・色などで選別
  2. 葉を縦切・横切して大きさを整える
  3. 選別した茶葉を乾燥・焙煎(火入れ)する
  4. それぞれの原料茶からできたお茶をブレンドする
  5. 玄米や抹茶をブレンドしたり、焙煎してほうじ茶にする
    などの作業があります。

お茶の仕上加工をする上で、まずはそのお茶が、どんな畑でどのように作られたかを知ることが大切だと考えています。

そして、その情報を参考に、さらに、どんな成分を持っているかを近赤外線成分分析器で計測し、それ以外の要素を長年の茶師の目を通して、作りたいお茶のゴール<香り、滋味、形状、水色>に合わせる作業を繰り返します。

お茶の香味は、その時々のお茶を飲む状況によって変わることを踏まえて、一期一会の気持ちで大切にお茶作りに励んでいます。

仕上加工(火入れ加工) 

仕上加工の火入れという加工があります。荒茶のこした水分を製品化する前にさらに熱を与えることで水分を減少させ、香りと味を整える工程です。

熱の与え方には、
1.電子レンジで使うマイクロ波を使って茶葉の内部に熱を加える方法
2.直火を使っての外側から円筒のフライパンの中で加熱する方法
3.直火の中でもセラミックを熱して遠赤外線を使う方法
4.底が網になっている棚式の機械に熱風を流して行う方法
などがあり、さらにどの素材(和紙等)を通して行うかなど、様々な方法があり、地方によっても特徴ある火入れがあります。

磯田園では、荒茶原料の素材の特徴を吟味し、瑞々しい若葉の香り、香ばしい若葉の香り、焙煎の強い香ばしい香り、玉露やかぶせ茶のみが持つ青海苔のような上品な香りなどを大切にして、さらに甘み、旨みを引きたたせたり、渋み、苦みを和らげたりするイメージを考えます。

そして、茶葉それぞれの成分分析データと茶師の官能検査の両方の視点の総合的な判断から火入れ加工方針を決め火入れ加工を行っています。

仕上加工(ブレンドの妙)

美味しいお茶作りに合組(ごうぐみ)という工程があります。
コーヒー豆でいうブレンドです。磯田園では、この合組とは「2種類以上のお茶をただ単に混ぜるのではなく、それぞれのお茶が滑らかに混ざり合い、作り手がイメージしたお客様に喜んでもらえる味、香り、水色、形状のお茶にすること」と考えています。

お茶の美味しさを構成する「香り」と「味」の成分には、色々な要素があり、無限の組合せができますが、お互いを引き立てる相性の良いお茶の組合せと、逆にお互いを疎外する相性の悪いお茶の組合せもあります。

その理由は、通常の成分分析装置だけでは簡単に計測できない、様々なミネラル分やその他の要素が関係していると思われます。この味と香りの未知数と奥深さこそが、お茶の魅力だと感じています。

私たちは、四季の移ろいに合わせて、茶の樹の声を聞きながら育て、勘と経験に頼りすぎることなく、「茶天狗になるな」の言葉を胸に、生茶葉をよくみて荒茶をつくり、それぞれの荒茶の個性を観察・選別して、お客様が「美味しい」と飲んでいただけるお茶を、仕上(火入れ・合組)して、お届けできるよう日々精進させていただいております。

ページ上部へ戻る